気候科学:AD1900年以降のグリーンランド氷床質量損失の空間分布と時間分布
Nature 528, 7582 doi: 10.1038/nature16183
20世紀における温度変化に対するグリーンランド氷床(GIS)の応答は、主にグリーンランド全体の観測が初めて可能になった1992年以前の氷床の質量変化の空間分布と時間分布の見積もりが難しいことから、まだ議論が続いている。20世紀における変化のこれまでの見積もりは、経験的モデルとエネルギー収支モデルに基づくものしかなかった。そのため、気候変動に関する政府間パネルの第5次評価報告書には、1990年以前の全球平均海水準収支に対するGISの寄与の観測に基づく見積もりは含まれていない。今回我々は、1980年代の航空写真を用いて、1990年から現在までのGIS全体の氷床の空間的な質量損失を算出した。これによって、19世紀末における小氷期のGISの最大範囲に関連する地形学的特徴の地図を高分解能で正確に作成できた。我々は、3つの期間の氷床の全質量損失とその空間分布をそれぞれ、1900~1983年(75.1 ± 29.4ギガトン/年)、1983~2003年(73.8 ± 40.5ギガトン/年)、2003~2010年(186.4 ± 18.9ギガトン/年)と見積もった。さらに、2つの表層質量収支モデルを用いて、質量収支を表層質量収支(全降水量から全昇華量と流出量を差し引いたもの)の項と動的な項に分割した。その結果、現在変化している地域の多くは20世紀を通して大きく薄化した地域と同一であることが分かった。さらに、表層質量収支の項は2003年以降大きく減少しているが、動的な項は過去110年間変化していないことも明らかになった。全体として、今回の観測に基づく知見は、20世紀において全球海水準上昇の少なくとも25.0 ± 9.4 mmにGISが寄与したことを示している。今回の結果は、全球海水準上昇の予測に用いるモデルの信頼性の評価に引き続き重要な、20世紀の海水準収支を決定するのに役立つと思われる。

