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進化学:遊走性のニューロン前駆細胞は尾索動物の神経板境界部から生じる

Nature 527, 7578 doi: 10.1038/nature15758

神経堤は進化上の新奇性であり、頭蓋や顎など脊椎動物の解剖学的新機軸が生まれる土台となった。胚発生期に、多能的な神経堤細胞は神経板の側縁で指定されたのち、離層して遊走し、多様な細胞タイプに分化する。まだ脊椎のない脊索動物[頭索動物と尾索動物(被嚢類)]では、神経板境界部の細胞はMsxSnailPax3/7などの保存された因子群を発現し、メラニンを含む色素細胞を生む。色素細胞は脊椎動物では神経堤細胞から生じる。しかし、無脊椎動物の神経板境界部の細胞から、色素細胞以外の神経堤系細胞のホモログが生じるという報告はない。従って、提案されている神経堤の進化モデルでは、祖先の神経板境界部のプログラムに、遊走能や多種細胞の生成能の獲得を通して脊椎動物特有の精緻化が加わった、と想定されている。今回我々は、尾索動物のカタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)のオタマジャクシ形幼生の特定の神経性細胞タイプであるBTN(bipolar tail neuron)が、脊椎動物の神経堤由来の脊髄神経節ニューロンと一群の性質を共有することを示す。BTN前駆細胞は、尾側の神経板境界部の細胞から生じ、離層して神経管両側の沿軸中胚葉に沿って遊走し、最終的には求心性ニューロンに分化して、表皮の感覚細胞と運動ニューロンの両者にシナプス結合をつくる。すなわち、祖先脊索動物の神経板境界部は、すでに遊走能を備えた末梢ニューロンと色素細胞を生み出しており、神経堤は、複数の既存の神経板境界部の細胞の分化プログラムの上流に多能性前駆調節状態を獲得することで出現したと考えられる。

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