Letter
発生:発生中のショウジョウバエの翅におけるデカペンタプレジックと成長制御
Nature 527, 7578 doi: 10.1038/nature15730
動物の発生過程でモルフォゲンが担う作用に関する主要モデルの1つとして、ショウジョウバエ(Drosophila)の翅原基の発生過程では、骨形成タンパク質2/4(BMP2/4)様リガンドであるデカペンタプレジック(Dpp)が、長距離にわたるシグナル伝達勾配を形成して成長とパターン形成の両方を誘導するとされている。前後区画境界に沿って1本の縞状に並んだ細胞群から分泌されるDppがパターン形成に果たす役割は明確になっているが、Dpp勾配が細胞の均一な増殖を誘導する仕組みについては議論があり、ほとんど解明されていない。今回我々は、翅原基の発生におけるDppの空間的・時間的な必要性を正確に突き止めるために、CRISPR–Cas9によるゲノム編集法を用いて、フリッパーゼ認識配列(FRT)依存性の条件的ヌル対立遺伝子を作製した。内在性の縞状領域からDppを遺伝学的に除去することにより、下流のp-Mad(phospho-Mothers against dpp)活性化の勾配形成と、パターン形成の標的であるspalt(sal)、optomotor blind(omb;別名bifid)およびbrinker(brk)の調節に、Dppが必要なことが確かめられた。しかし意外なことに、三齢幼虫の翅原基のwing blade(将来翅の平面となる領域)の区画境界でdppが発現されなくても、細胞増殖は比較的正常な速度が維持され、成長にはわずかな異常しか見られなかった。これらの結果は、幼虫の発生の後半過程では、前後区画境界から生じたDppモルフォゲンの勾配が翅原基の成長に直接必要ではないことを示している。

