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がん:ASS1欠損腫瘍でのアスパラギン酸の転用がde novoピリミジン合成を促進する

Nature 527, 7578 doi: 10.1038/nature15529

がん細胞は自身の利益のために既存の代謝経路を乗っ取り、作り直す。アルギニノコハク酸シンターゼ(ASS1)は尿素回路の酵素で、アンモニアおよびアスパラギン酸から尿素への窒素の変換に不可欠である。肝臓でのASS1を介した窒素フラックスの減少は尿素回路の異常であるシトルリン血症を引き起こす。尿素生成におけるASS1活性の喪失の結果はよく研究されているが、多数のがんにおいてASS1活性が体細胞性に抑制される目的はほとんど分かっていない。今回我々は、がんでのASS1活性の低下が、CAD(カルバモイルリン酸シンターゼ2、アスパラギン酸トランスカルバミラーゼおよびジヒドロオロターゼの複合体)の活性化を介してピリミジン合成を促進にすることによって増殖を支えることを示す。我々はまず、2つのタイプのシトルリン血症の患者でASS1活性の喪失の結果を詳細に調べた。ASS1の欠損によって起こるI型シトルリン血症(CTLN I)では、アスパラギン酸輸送体であるシトリンの欠損によって利用できるASS1の基質が減少するII型シトルリン血症(CTLN II)と比較して、ピリミジン合成と増殖が亢進していることが分かった。これらの結果に基づき我々は、がんでのASS1の欠損により細胞質のアスパラギン酸レベルが上昇し、それによってCADの活性化が増大することを示す。CADの活性化増大は、利用できる基質の増加およびmTOR(mammalian target of rapamycin)経路を介したS6K1によるCADリン酸化の増加による。シトリンの阻害、mTORシグナル伝達の阻害あるいはピリミジン合成の阻害によりCAD活性を低下させると増殖が抑えられることから、ASS1の発現が低下している多数のがんに対する治療戦略になる可能性がある。我々の結果は、ASS1の発現低下ががんの増殖を支える新しい機構であることを実証しており、また、尿素回路の酵素とピリミジン合成の間に代謝的な関連があることを示している。

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