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構造生物学:ヒドラジンシンターゼ多タンパク質複合体の内部の仕組み

Nature 527, 7578 doi: 10.1038/nature15517

嫌気的アンモニア酸化(アナモックス)は地球の窒素循環に大きな役割を持っており、またエネルギー効率の良い排水処理に使われている。微生物によるこの反応では、亜硝酸とアンモニアから窒素(N2)ガスが形成される。海洋中から大気中へと放出される窒素ガスの最大50%は、この反応によって合成されていると見積もられている。注目すべきことに、アナモックス過程は、非常に珍しく極めて反応性の高い中間体のヒドラジンに依存しており、この化合物は高い還元力のためにロケット燃料としても用いられている。だが、これまでのところ、ヒドラジンが合成される酵素反応機構は解明されていない。本論文では、アナモックスを行う細菌のKuenenia stuttgartiensisから単離したヒドラジンシンターゼ多タンパク質複合体の分解能2.7 Åでの結晶構造に加えて、生物物理学的および分光学的研究の結果を報告する。この構造から、複合体はヘテロ三量体から構成される、長く伸びた二量体であることが分かった。個々のヘテロ三量体には、c型ヘムを含む独特な活性部位が2か所と、酸化還元反応の相手と相互作用する部位が1か所存在する。さらに、1本のトンネル系がこれらの活性部位を結び付けている。結晶構造から、ヒドラジン合成は2段階機構によって行われると考えられる。すなわち、γサブユニットの活性部位で起こる一酸化窒素のヒドロキシルアミンへの三電子還元と、それに続いてαサブユニットの活性中心で起こるアンモニアとの縮合によってヒドラジンが生じる。これらの結果は、ヒドラジンの生物合成の機構に関する、我々の知るかぎり初めての詳細な構造的知見であり、これは自然界での窒素化合物変換の解明に重要な意味を持つ。

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