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集団遺伝学:さまざまなヒト集団での身長と認知機能に対するドミナンスの方向性

Nature 523, 7561 |  Published: |  doi: 10.1038/nature14618


ホモ接合性は古くから、珍しいメンデル型遺伝病(深刻な場合が多い)と関連があるとされており、ダーウィンも、近親交配が進化上の適応度を低下させることに初めて気付いた1人だった。しかし、近代のヒト集団で一般的な、両親の血縁度が近親交配よりも離れている場合のホモ接合性の影響については、それほど解明されていない。現在では、ゲノムデータを利用してホモ接合連続領域(runs of homozygosity;全長にわたってホモ接合であると考えられる領域)を観察することにより、人々の健康にとって重要な形質に対してホモ接合性が及ぼす影響を調べることができる。ほとんどのヒト集団では、ゲノム全域にわたってホモ接合性のレベルが低いことを考えると、十分な説得力を持たせるには、膨大な人数についての情報が必要となる。今回我々は、102のコホートからなる35万4224人を対象として、健康に関係する16の量的形質についてホモ接合連続領域を使った解析を行い、ホモ接合連続領域の総和と4つの複合形質[身長、1秒量(努力肺活量測定の最初の1秒間の努力呼気量)、一般認知能力、学業達成度(就学期間)]の間に、統計的に有意な関連があることを見いだした(それぞれP < 1 × 10−300、2.1 × 10−6、2.5 × 10−10、1.8 × 10−10)。いずれの場合もホモ接合性が上昇すると量的形質の値が低下し、いとこ婚の子孫と同程度のホモ接合性で、身長は1.2 cm低く、学業達成度(就学期間)は10か月短かった。4つの大陸別集団や、ゲノム全域のホモ接合性の程度がさまざまに異なる集団で、類似の効果量が認められることから、この解析結果は、交絡ではなく、ホモ接合性そのものが直接に表現型の分散に寄与していることを示す証拠となる。今回よりも著しく対象サンプルサイズの小さいこれまでの報告とは対照的に、ゲノム規模のホモ接合性が、血圧、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールや、他の10種類の心血管代謝関連形質に影響するという証拠は見つからなかった。進化の方向性選択が働いている形質にはドミナンスの方向性が予測されるので、この研究によって、ヒトの進化において身長と認知機能の上昇は正の選択を受けてきたが、高齢発症疾患の重要なリスク因子の多くは正の選択を受けてこなかった可能性があると推察される。

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