環境化学:鉄の地球化学的データの統計解析が示す後期原生代の限定的な酸素化
Nature 523, 7561 doi: 10.1038/nature14589
原生代から顕生代への移行期に堆積した堆積岩は、極端な気候変動、大気中の酸素濃度上昇または海底の酸化還元状況の再構成、初期の動物の多様化を記録している。推測される酸化還元状態の変化によって、確認される生物多様性のさまざまな傾向が促進されたと広く考えられている。しかし、こうした古環境の状況を確証するには、地球化学的代理指標によって海洋の酸化還元構造の変化を追跡し、大気中の酸素量の見積もりに変換する必要がある。鉄系の代理指標は、古代海洋の酸化還元化学的状況を追跡するのに最も有効な手段の1つである。こうした代理指標は、本来的に局在しているが、総合的に統計解析すれば全球的な関連が得られる。今回我々は、23億~3億6000万年前の頁岩から得られた約4700の鉄の存在状態の測定結果を解析した。統計解析の結果は、中期原生代の海洋の亜表層水塊は大部分が無酸素状態で含鉄性(溶存酸素が少なく鉄を含む)であったが、新原生代には見られない還元的(硫化物を含む)環境へ向かう傾向があったことを示している。また、初期の動物は底生硫化物のストレスをあまり受けなかったことが示唆された。さらに、鉄の地球化学的データは、酸化還元状態に敏感な微量金属元素の存在度に基づく代理指標とは異なり、エディアカラ紀とカンブリア紀を通して統計的に有意な酸素含有量の変化を示しておらず、末期原生代の酸素増加の大きさを厳しく制約している。実際、今回の微量金属元素データの再解析結果は、顕生代になってもしばらく続いた酸素化と矛盾しない。従って、酸化還元条件の変化が動物の多様化を促進したのならば、現在の酸素極小層の底生生物群集に見られるように、機能的な臨界しきい値や生態学的な臨界しきい値を超える限定的な酸素増加によって生じたと考えられる。

