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システム生物学:局所的な混み合いに対する細胞内因性の脂質構成の順応は細胞の社会的挙動を促進させる

Nature 523, 7558 doi: 10.1038/nature14429

細胞は、成長する自身が置かれている状況を感知し、オートクリンおよびパラクリンのシグナル伝達の仕組みによって表現型を順応させて多細胞パターン形成を可能にしている。しかし、これらと同じシグナル伝達分子や基質に曝露された細胞集団でもパターン形成は起こり、そうした細胞集団でのパターン形成は細胞の局所的な混み合いのような単一細胞の集合状況の特徴としばしば相関する。今回我々は、特定の細胞間コミュニケーションを必要とせずに多細胞パターン形成を可能にする細胞内因性の分子機構を明らかにした。この機構は、細胞がその伸展能によって単一細胞の局所的な混み合いを感知することで機能し、FAK(focal adhesion kinase;別名PTK2)を活性化して、膜の恒常性を制御する遺伝子群を順応させる。混み合いの度合いが小さい細胞では、FAKがFOXO3およびTAL1を阻害することでABC輸送体A1(ABCA1)の転写を抑制した。エージェントベースの計算論的モデル化や実験による確認から、集団でのABCA1発現パターンの出現には、膜を基本とするシグナル伝達とフィードバック制御が不可欠であることが明らかになった。ABCA1の発現パターンの出現が、細胞の混み合い状態に応じて膜の脂質構成を順応させ、ABCA1発現そのものの抑制を含むさまざまなシグナル伝達活性に影響を与えている。この細胞内因性機構の単純なデザインと、哺乳類の単一細胞のシグナル伝達状態にこの機構が及ぼす広範な影響は、調節可能な膜脂質構成が集合状態の細胞の挙動に基本的な役割を果たしていることを示唆している。

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