構造生物学:ヒトのホスホフルクトキナーゼ1の構造およびがん関連変異の原子レベルでの基盤
Nature 523, 7558 doi: 10.1038/nature14405
解糖の「門番」役を担うホスホフルクトキナーゼ1(PFK1)は、フルクトース 6-リン酸のフルクトース-1,6-ビスリン酸への変換という解糖系の最初の不可逆段階を触媒する。10種類を超える代謝産物やホルモンシグナル伝達に応じたPFK1のアロステリックな活性化と阻害が、解糖系の流量をエネルギー需要に合わせて微調整している。PFK1の活性を阻害する変異は、糖原病VII型(別名は垂井病)を引き起こし、筋肉のPFK1を欠失したマウスは脂肪貯蔵量が減少する。さらに、PFK1はがんにおける代謝再プログラム化にも重要な役割を果たしているという説もある。グルコースの流量に極めて重要な役割を持つにもかかわらず、哺乳類PFK1四量体の生物学的に適切とされる結晶構造は、まだ決定されていなかった。今回我々は、哺乳類のPFK1四量体の構造を報告する。これらはATP–Mg2+、あるいはADPと複合体を形成したヒト血小板型アイソフォーム(PFKP)について、それぞれ3.1 Å、3.4 Å分解能で得られたものである。これらの構造から、ヌクレオチドの加水分解の際に酵素で起こる大きなコンホメーション変化に加えて、四量体の独特な接触面が明らかになった。この接触面に存在する残基に変異が生じると、四量体形成、酵素の触媒活性と調節に影響する可能性があり、このことから四量体が機能的に重要だと分かる。一方、解糖経路の流量変化はがんの特徴の1つであり、この新しい構造を使えば、ヒトがんで見つかっている体細胞PFK1変異の機能への影響を分子レベルで理解することができる。我々はこのような変異のうちの3つについて特性を調べ、PFKP活性のアロステリック調節と乳酸生産にそれぞれ異なった影響があることを明らかにした。PFKPの体細胞変異や触媒部位に関わる詳細な構造は、PFK1活性を治療標的としてがんでの解糖調節異常を制御するための指針となるだろう。

