がん:腫瘍増殖圧による腫瘍発生性βカテニン経路の機械刺激誘導
Nature 523, 7558 doi: 10.1038/nature14329
腫瘍微小環境は、繊維の硬さのような機械力、あるいは過剰増殖する細胞塊の拡大によって引き起こされる機械圧により、腫瘍形成に寄与することがある。今回我々は、腫瘍の増殖によって隣接する非腫瘍上皮に対して働く機械圧の寄与について調べた。Notch+Apc+/1638Nマウスモデルにおけるマウス結腸腫瘍形成の初期段階で、Retおよびβカテニンシグナル伝達の増加に関連する活性型Notchを過剰発現する隣接陰窩の過剰増殖によって引き起こされる機械圧ストレスが非腫瘍上皮細胞に観察された。そこで我々は、マウス結腸の近傍の皮下に磁石を挿入し、in vivoで決められた機械圧をかけることができる方法を開発した。移入された磁石は、静注後に結腸陰窩周囲の結合組織の間葉細胞中で安定化されている超磁気リポソームに対して磁力を生じた。磁気が引き起こす圧は、超音波ストレインイメージング法や剪断波エラストグラフィーにより観察されたように、組織の硬さに影響を与えずに、量的にほぼ1200 Pa程度の初期の内因性腫瘍増殖ストレスを模倣した。腫瘍の増殖圧を模倣した圧をかけることで、迅速なRet活性化および下流のβカテニンのTyr654のリン酸化が引き起こされて、アドヘレンスジャンクションでのβカテニンとEカドヘリンとの相互作用が障害され、15日後にβカテニンの核移行が見られた。その結果、1か月後にはβカテニン標的遺伝子の発現増加とともに、初期腫瘍性異常陰窩巣の形成を伴った陰窩の拡大が観察された。今回明らかになった腫瘍発生性βカテニン経路の機械刺激による活性化から、腫瘍周囲の健康な上皮細胞における機械シグナル伝達経路を基盤とする、これまで調べられていなかった腫瘍増殖様式が示唆され、これが腫瘍の不均一性に関係している可能性がある。

