がん:急性リンパ芽球性白血病でのシグナル伝達の閾値と負のB細胞選択
Nature 521, 7552 doi: 10.1038/nature14231
B細胞は、B細胞抗原受容体(BCR)シグナル伝達の強度が中間レベルになるように選択される。シグナル伝達の強度が最小閾値以下になるように減弱(例えば機能しないBCRの場合)したり、あるいは最大閾値を超えるように過剰活性化(例えば自己反応性のBCRの場合)したりすると、負の選択が引き起こされる。急性リンパ芽球性白血病(ALL)の症例の25%程度で、ALL細胞は発がん性BCR-ABL1チロシンキナーゼ(フィラデルフィア染色体陽性)を保有しており、これはプレBCRシグナル伝達の恒常的活性化と類似した結果をもたらす。現在の治療方法は主に、生存に必要な最小閾値以下に発がん性シグナル伝達を抑制するようなさらに強力なチロシンキナーゼ阻害剤の開発に集中している。我々は、最大閾値を超えるような過剰活性化を標的を絞って行えば、自己反応性B細胞を除去するための枯渇チェックポイントが作動して、ALL細胞の細胞死が選択的に誘導されるのではないかと考え、検証を行った。マウスのBCR-ABL1細胞での近位プレBCRシグナル伝達のさまざまな構成因子を調べることで、細胞死の誘導にはSykチロシンキナーゼ活性の漸増が必要で、これだけで十分であることが分かった。過剰に活性化されたSykは、ALL細胞上の自己反応性BCRの急性活性化と同等な機能を示した。負の選択のこの基本的機構は、発がん性形質転換であるにもかかわらず、ALL細胞全てで依然として機能していた。正常なプレB細胞とは異なり、患者由来のALL細胞は抑制性受容体のPECAM1、CD300AおよびLAIR1を高いレベルで発現している。遺伝学的研究によって、Pecam1、Cd300aおよびLair1が、抑制性ホスファターゼのPtpn6およびInpp5dの動員を介して発がん性シグナル伝達の強度を調整するのに極めて重要であることが明らかにされた。我々は、INPP5D(別名SHIP1)の新規低分子阻害剤を用いて、SYKの薬理学的過剰活性化と負のB細胞選択の作動が、ヒトALLで薬剤耐性を克服する有望な新戦略であることを実証した。

