エピジェネティクス:ヒトの初期胚におけるDNAメチル化の全体像
Nature 511, 7511 doi: 10.1038/nature13544
DNAのメチル化は、哺乳類の胚発生のエピジェネティックな調節に極めて重要な要素である。しかし、着床前のヒト胚におけるその動的なパターンは、技術的な難しさと、必要な研究素材が手に入りにくいことから、ゲノム規模では解析されていない。本研究では、RRBS(reduced representation bisulphite sequencing)と、全ゲノムのバイサルファイト塩基配列解読法を行い、接合子期から着床後までのヒト初期胚のメチロームを体系的にプロファイリングした。ゲノム規模での脱メチルの主な波は、以前のマウスでの観察とは対照的に2細胞期に完了することが分かった。さらに、父系ゲノムの脱メチルは母系ゲノムのものよりもずっと速く、接合子期の終わりまでに起こり、雄性前核のゲノム規模のメチル化レベルは、雌性前核のものよりもすでに低い。プロモーターのメチル化と遺伝子発現の逆相関は、初期胚発生の間に次第に強くなり、着床後段階でピークに達する。さらに我々は、活性化している遺伝子で、多能性ヒト胚性幹細胞でプロモーター領域にヒストンH3リシン4のトリメチル化(H3K4me3)標識を持つものは、成熟した配偶子でも、また着床前発生全体を通しても、本質的にDNAがメチル化されていないことを示す。また、進化的に新しいLINE(long interspersed nuclear element)やSINE(short interspersed nuclear element)は、同じファミリーの古いエレメントに比べて脱メチルの程度が低く、転写産物の量は多いことを示す。このことから、初期胚は進化的により新しくより活発な転位性因子により多くのメチル化残存を維持する傾向があることが分かる。今回の結果は、ヒト初期胚のメチロームの非常に重要な特性を明らかにするとともに、遺伝子発現調節や転位性因子抑制との機能的関連についての手がかりをもたらすものである。

