気候科学:過去55万年間にわたる中緯度域の半球間の水文学的シーソー
Nature 508, 7496 doi: 10.1038/nature13076
熱帯収束帯(ITCZ)の緯度方向の移動によって一方の半球での湿潤化(降水量の増大)ともう一方の半球での乾燥化が同時に起こるという、半球間の水文学的シーソーが、熱帯域と亜熱帯域の一部で発見されている。例えば、中国とブラジルの亜熱帯域の洞窟二次生成物(鍾乳石や石筍などの洞窟内生成物)の記録は、降水変動の代理指標である酸素同位体の時系列において、千年から軌道の時間スケールで、逆の変化傾向を示しており、水文循環の位相が北半球と南半球の亜熱帯域で逆だったことを示唆している。この熱帯域から亜熱帯域の水文現象は、軌道強制力に対する初期の重要な気候応答である可能性がある。しかし、このような半球間の水文学的シーソーが高緯度域や全球の気候システムに与える影響は、分かっていない。本論文では、熱帯域の記録に見られる逆位相関係は、両半球の西太平洋中緯度域にも存在することを示す。今回の結果は、朝鮮半島の洞窟二次生成物の成長頻度の新たな55万年間の記録に基づいており、我々はこれに相当する南半球の記録と比較している。韓国のデータは不連続で、24個の異なる洞窟二次生成物から得られたものであるが、それでも洞窟二次生成物の成長の最盛期、従って降水の最盛期を識別できる。半球間の明瞭な逆位相関係は、過去55万年間にわたる半球間の水文学的シーソーの影響が及ぶ範囲が、少なくとも東南アジアなどの中緯度域にまで拡大され、軌道の時間スケールでのITCZの移動が、温帯の気候システムに重大な影響を与え得ることを示している。さらに、今回の結果から、日射によって駆動されるITCZのダイナミクスが、北半球中緯度域における水蒸気と植生のフィードバックを誘発する可能性があり、第四紀氷期サイクルを通じて、全球の気候条件を調節していた可能性がある。

