医学:現代の鳥インフルエンザウイルスの内在遺伝子に対する同期した全球規模の選択的一掃
Nature 508, 7495 doi: 10.1038/nature13016
インフルエンザなどの人獣共通感染症はヒトの健康に対する深刻な脅威であり続けている。しかし、A型インフルエンザウイルス(IAV)のようなRNAウイルスの出現を仲介する要因は、まだ完全には解明されていない。系統発生学的な推論は、IAVの起源の再構築や、宿主内および宿主間でのIAVの流動の追跡に極めて重要である。本論文では、IAVの系統発生を高い信頼度で推論するには、宿主動物種ごとのIAV系統がそれぞれ独立した分子進化速度を明確に持てるようにすることが必要であり、そうした考慮をしない「緩和型」分子時計('relaxed' molecular clock)モデルなどの手法は、最終的に大きく誤った結果を招く可能性があることを示す。宿主特異的なローカル時計(host-specific local clock)モデルを用いた系統ゲノミクス解析から、ゲノムの全領域にわたる非常に一貫性の高い進化史が復元され、また、ウマH7N7系統が鳥由来株(およびヒト、ブタ由来株と、ウマH3N8系統)の姉妹分岐群であり、1800年代半ばから後半の時期に鳥由来株と祖先を共有していたことが明らかになった。さらに、西半球および東半球の主要な鳥インフルエンザ系統は、1800年代後半に各遺伝子の合祖(coalesce)が存在すると推定された。我々は、こうした系統発生解析結果とこれらの主要なノードの同期性に基づいて、鳥インフルエンザウイルス(AIV)の内在遺伝子は1800年代後半に始まる全球規模の選択的一掃(selective sweep)を受けたと推論する。この過程は、20世紀を経て現在に至るまで継続している。その結果生じた西半球AIV系統は後に、そのゲノム領域の大部分が1918年のパンデミックウイルスに寄与し、またそれとは独立に1963年にウマ間で大流行したH3N8系統にも寄与した。今回の手法によって、宿主系統内および宿主系統間でのウイルスの遺伝子やゲノムの流動など、IAV進化のパターンや過程について明快な解決が得られる。

