生化学:構造とゲノムの文脈を用いることによる新規な酵素と代謝経路の発見
Nature 502, 7473 doi: 10.1038/nature12576
ゲノムプロジェクトにより見つかったタンパク質に、妥当な機能情報を割り当てることは非常に難しい。主な懸案事項は過剰な予測やデータベースのアノテーションエラーである。我々も他のグループも、実験的に導かれたり相同性に基づいたりする三次元構造への「メタボライト(代謝物)ドッキング法」によって機能を発見するための計算主導戦略を開発中である。細菌の代謝経路はしばしば「ゲノム上の一区域(genome neighbourhoods)」(遺伝子クラスターやオペロン)によりコードされており、このことは機能割り当てのための重要な手がかりとなることがある。我々は最近、大腸菌(Escherichia coli)の解糖系の中間体を「予測する」ことにより、ドッキングと経路における前後関係の相乗効果を実証した。同じ経路内の複数の代謝物結合性タンパク質や酵素にメタボライトドッキング法を適用すれば、基質特異性についてのin silico予測の信頼性は増大する。それは、経路の中間体は構造的に似ているからである。今回、我々は、微生物の遺伝子クラスターにコードされた複数の酵素の基質特異性について、構造に基づく手法を用いて予測を行った。これにより、機能未知で構造が明らかになっている酵素(PDB 2PMQ)のin vitro活性と、トランス-4-ヒドロキシ-L-プロリンベタイン(tHyp-B)とシス-4-ヒドロキシ-D-プロリンベタイン(cHyp-B)の2-エピマー化の正確な予測、Hyp-B 2-エピメラーゼが関与する異化経路の正しい同定が可能になったことを報告する。仮想ライブラリースクリーニング(ドッキング)により予測された、基質がリガンド化した形態は実験的に裏付けられた。予測された経路における酵素活性はin vitro解析および遺伝子解析により確認され、中間体はメタボロミクスにより明らかになった。また、経路をコードする遺伝子が、高い塩濃度によって抑制されることはトランスクリプトミクスにより実証され、tHyp-Bの浸透圧調節物質としての役割が確認された。この研究は、新しい代謝経路の発見を可能にする、構造主導の機能予測の実用性を確立するものである。

