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医学:ガンビアトリパノソーマのヒト血清に対する抵抗性が生じる仕組み

Nature 501, 7467 doi: 10.1038/nature12516

ヒトのアフリカ睡眠病の症例の約97%は、アフリカの寄生虫ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense)が原因である。ウシのナガナ病の原因となるブルーストリパノソーマ(T. b. brucei)などの、トリパノソーマ属のツェツェバエが媒介する他のいくつかの種に対してはヒト自然免疫系が特異的に作用するが、ガンビアトリパノソーマはこの自然免疫系に抵抗性を示す。一部のアフリカトリパノソーマ属に対するヒト免疫反応は、トリパノソーマ溶解因子(TLF-1、TLF-2)と名付けられた2種類の血清複合体の働きによって起こる。この2つのどちらにもHPR(haptoglobin-related protein)とアポリポタンパク質LI(APOL1)が含まれている。HPRがヘモグロビン(Hb)と結合すると、TLF-1がトリパノソーマ受容体TbHpHbRに結合できるようになり、受容体を介してトリパノソーマに取り込まれる。TLF-2は、TbHpHbRとは関係なくトリパノソーマに侵入する。APOL1はエンドソーム/リソソーム膜にまず挿入され、その後にトリパノソーマを殺す。今回我々は、ガンビアトリパノソーマのTLFに対する抵抗性は、ガンビアトリパノソーマ特異的糖タンパク質(TgsGP)の疎水性βシートを介しており、これがAPOL1の毒性を防ぎ、脂質との相互作用の際に膜の硬化を引き起こすことを明らかにした。TLFに対する抵抗性には、この他にもう2つの要因が関わっている。1つはAPOL1に対する感受性の低下で、これにはシステインプロテアーゼ活性が必要であり、もう1つはL210Sの置換によるTbHpHbRの不活性化である。こういった多元的な防御機構があるために、ガンビアトリパノソーマでは、ブルーストリパノソーマのTbHpHbRをトランスジェニックに発現させても、正常なヒト血清中での寄生虫溶解が起こらない。しかし、このトランスジェニックトリパノソーマも、ハプトグロビン濃度が低い血清中にある場合は、Hbおよび受容体との結合で競合するハプトグロビンがないためにTLF-1の取り込みが多くなり、破壊されてしまう。低ハプトグロビン血清中でのAPOL1の高い取り込みを防止するためにTbHpHbRを不活性化するという仕組みは、西アフリカや中央アフリカでは、溶血が誘発する低ハプトグロビン血症の主な原因となるマラリアとガンビアトリパノソーマ感染の地方病流行域が重なり合うために進化した可能性がある。

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