細胞:AIDは多能性遺伝子のエピジェネティックな記憶を除去することにより幹細胞の表現型を安定化させる
Nature 500, 7460 doi: 10.1038/nature12299
活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID;別名AICDA)は、体細胞超突然変異や免疫グロブリン遺伝子座でのクラススイッチ組換えに必要である。胚中心B細胞では、AIDは高発現しており、抗体の多様性を生み出すのに役立つ固有のミューテーター活性を持つ。しかし、AIDによって直接脱アミノ化された5-メチルシトシンは、その後に塩基除去修復によりシトシンに置換されることから、AIDはエピジェネティックにも遺伝子発現を調節している可能性がある。この経路は遺伝子の脱メチル化を促進することで、エピジェネティックな記憶を除去している。例えば、AIDは始原生殖細胞でゲノムの活発な脱メチル化を促進する。しかし、胚性幹細胞との融合後の体細胞核での多能性の促進にAID機能が必要かどうかについては、研究結果にばらつきがある。本論文では、分化したマウス細胞種を誘導多能性幹細胞へと再プログラム化する相対的能力を、AIDを欠損する細胞で比較することで、AIDがエピジェネティックな記憶を調節するかどうかを直接検討した。我々は、Aidヌル細胞が再プログラム化過程に一過性に過剰に応答することを示す。Aidヌル細胞は多能性遺伝子の発現を開始させるが、多能性状態を維持することができない。Aidヌル細胞のゲノムは再プログラム中の細胞でも高メチル化状態のままであり、多くのMYC標的遺伝子など、多能性に関連する高メチル化遺伝子は、安定した発現上昇が起こらない。最近の研究から、メチル化状態に関連する再プログラム化の後期段階が明らかになっており、二次的な多能性ネットワーク構成要素群の関与が示唆されている。AIDはこの再プログラム化の後期段階を調節しており、エピジェネティックな記憶を除去して、多能性状態を安定化させている。

