Letter

工学:DNA鎖置換カスケードによるニューラルネットワーク計算

Nature 475, 7356 doi: 10.1038/nature10262

知覚やパターン認識、記憶形成から意思決定や運動活動の制御にまで至る、哺乳類脳の非常に高い能力に触発され、さまざまな人工知能システムで脳のこうした能力の再現が試みられ、顔認識や異常検出、医療診断、ロボット車両制御などに使われている。しかし、ニューロンを基盤とする脳が進化する前には、生存に必要な「知的な」挙動を個々の細胞に与えていたのは、複雑な生体分子回路であった。だが、分子が「考えられる」ようにする仕組みについての研究からは、同じくらい多様な計算モデルや人工化学システムへの応用は生み出さてはいない。生体分子システムはin vivoではニューラルネットワークのような計算を行っていると考えられており、理論的には人工的な化学類似体の合成が提案されているが、現在実験的には単一ニューロンの機能を十分に満たすものにすら達していない。今回我々は、DNA計算や鎖置換回路の豊富さに基づいて、分子システムが脳のような自律的挙動を示すようになる仕組みを示す。多層デジタル回路の実験的スケールアップが可能な単純なDNAゲート構造を用いて、任意の線形閾値回路(人工ニューラルネットワークモデル)を、小さなニューラルネットワークとして機能するDNA鎖置換カスケードに系統的に変換した。この方法によって、4つの完全に接続した人工ニューロンを持つホップフィールド連想メモリーの実現も可能である。このメモリーは、in silicoで訓練した後、4つの一本鎖DNAパターンを覚え、不完全なパターンを提示すると最もよく似たものを思い出すようになった。今回の結果は、DNA鎖置換カスケードを用いて、分子事象のパターン認識や意思決定、環境への対応ができるといった能力を、自律的化学システムに付与できる可能性を示唆している。

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