Letter 構造生物学:基質であるTBPと複合体を形成したSwi2/Snf2リモデリング因子Mot1の構造と機構 2011年7月21日 Nature 475, 7356 doi: 10.1038/nature10215 Swi2/Snf2型のATPアーゼは、ヌクレオソームなどのタンパク質–DNA複合体の破壊、組み立て、リモデリングを触媒することにより、転写、複製、修復といったゲノムに関連する過程を調節している。リモデリング反応では、ATPを原動力としてDNA上を動くモーター活性が、標的となるタンパク質–DNA相互作用を破壊すると考えられている。だが、リモデリング反応は複雑で特異性が非常に高く、ほとんど解明されていない。それは、リモデリング因子が基質タンパク質にどのように結合するのかについて、詳細な構造情報が得られていないことが主な原因である。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のMot1(modifier of transcription 1、ヒトではBTAF1)は、プロモーターからTATAボックス結合タンパク質(TBP)を特異的に解離させるSwi2/Snf2酵素で、細胞内に非常にダイナミックなTBPプールを生成することにより、転写を包括的に調節している。Mot1は単一ポリペプチドのままで機能するSwi2/Snf2酵素であり、結合する基質も比較的単純なことから、重要なSwi2/Snf2酵素ファミリーの解明を進めるのに理想的な系である。Mot1がTBP–DNA複合体を特異的に破壊する仕組みを解明するために、我々は微胞子虫の一種であるEncephalitozoon cuniculiのMot1–TBP複合体の結晶構造と電子顕微鏡観察構造を、生化学研究と組み合わせて解析した。本論文では、Mot1がTBPに巻き付き、栓抜きのように作用するらしいことを明らかにする。バネ状に並んだ16個のHEAT(huntingtin、elongation factor 3、protein phosphatase 2A、lipid kinase TOR)反復配列が、ループを差し入れてTBPのDNAから遠い部分をつかみ、Swi2/Snf2ドメインが上流側のDNAに結合して、DNAの位置を変えることによりTBP–DNAの相互作用を弱めている。次に「掛け金」がTBPのDNA結合溝をふさぎ、さらにシャペロンとして働いてDNAの再結合を防ぎ、プロモーターを確実に効率よく空いた状態にする。今回の解析により、リモデリング酵素が、保存されたSwi2/Snf2トランスロカーゼを使って、モーター活性とシャペロン活性とを組み合わせて機能的特異性を達成する仕組みが明らかになった。 Full Text PDF 目次へ戻る