エール大学での学生の死亡事故を契機に、研究者、研究機関は、安全についての心構えを厳しく問い直すべきだ。
p.259
doi: 10.1038/472259a
Volume 472 Number 7343
今週のハイライト
Cover Story: PhDの未来
物理: スピンに量子磁性を与える
神経: 次に移るべき時を知る仕組み
医学: カスパーゼと神経毒性
構造生物学: IκBキナーゼの構造
宇宙: エンセラダスが土星に残した痕跡
材料: 光で修復
地球: 火星の対流は単純にできている
生態: 多様性の維持
生理: 発生初期のセロトニン供給源
神経: 活発に移動するニューロン
細胞: TRIM5の抗ウイルス活性は二段構え
目次
Editorials
大学院が増え、博士号取得者も増加したが、その後の研究職が保証されておらず、学位制度の本格的な見直しが必要だ。
p.259
doi: 10.1038/472259b
地球温暖化対策の手詰まり状態を分析した米国の研究者による報告から、今後に向けた教訓が得られる。
p.260
doi: 10.1038/472260a
News
米予算案は、激しい攻防の末、大幅削減で決着したが、科学分野は比較的小幅な削減に。
p.267
doi: 10.1038/472267a
カナダの国立研究機構（NRC）が、産業界と連係した研究を重視する助成方針を打ち出し、基礎研究にしわ寄せの懸念が。
p.269
doi: 10.1038/472269a
エール大学で、夜間に1人で作業していたとみられる学生が事故死し、安全対策の見直しを求める動きが。
A death in the lab p.270
doi: 10.1038/472270a
がんの転移機序を説明する最も有力な理論に対し、疑問が。
p.273
doi: 10.1038/472273a
Q&A 世界原子力発電事業者協会（WANO）のStricker議長に、原子力発電の安全性改善について訊く。
p.274
doi: 10.1038/472274a
News Features
教育：PhD生産工場
The PhD factory p.276
世界では、ますます大量の博士が生み出されているが、生産ラインを止めるべき時が来ているのだろうか。doi: 10.1038/472276a
教育：PhDの見直し
Rethinking PhDs p.280
これまでのPhD教育の枠にとらわれない、革新的な研究者養成プランがいくつも出されている。doi: 10.1038/472280a
News & Views
発生生物学：胎盤の意外な役割
p.298
胎盤は発生中の胚と母親の間をつなぐという不可欠な働きをしているだけではない。胎盤は意外にも、胚での脳の発生に重要な神経伝達物質であるセロトニンの供給源でもあるのだ。doi: 10.1038/472298a
材料化学：修復にスポットライトを当てる
Spot-on healing p.299
光を照射すると損傷が修復されるゴム状のポリマーが作られた。この修復機構によって、必要に応じて局所的な修復が可能になり、多くの用途で材料の寿命を延ばすのに役立つと思われる。doi: 10.1038/472299a
進化生物学：光を感じる
p.300
腕足類幼生の繊毛型の光受容器には方向選択性があって目のように機能している可能性を示す証拠が得られた。これは、動物における光受容器の進化についてのずっと以前からの謎と関係がありそうだ。doi: 10.1038/472300a
原子物理学：量子磁性につながる道の1つ
p.301
極低温原子を凝縮体や多体現象のシミュレーターとして使う例はますます多くなってきている。今回、このような系を使って量子磁性のシミュレーションが行われた。doi: 10.1038/nature10101
がん：化学療法を制限するマクロファージ
p.303
がん治療にとって大きな障害となるのは、化学療法に対する耐性である。マクロファージと呼ばれる白血球細胞は、しばしば大量に腫瘍内に浸潤するが、今回、このマクロファージが腫瘍の化学薬剤耐性獲得を促進しているらしいことが明らかになった。doi: 10.1038/472303a
電子工学：パワーの波乗り
p.304
伸展性のある基板の上に、リボン状の圧電材料を波打った形に配置すると、より大きな機械的ひずみに対して割れずに持ちこたえ、平らな場合よりも多くのエネルギーをより効率よく取り込めることがわかった。doi: 10.1038/472304a
免疫学：二重の働きをしてのけるTRIM5
p.305
タンパク質のTRIM5は、レトロウイルスの被覆を標的としてウイルス感染を制限している。今回、このタンパク質は、パターン識別受容体としても働いて、細胞の自然免疫応答を開始させていることがわかった。doi: 10.1038/472305a
Articles
物理：光格子における反強磁性スピン鎖の量子シミュレーション
Quantum simulation of antiferromagnetic spin chains in an optical lattice p.307
doi: 10.1038/nature09994
神経：カテコールアミン受容体の多型は線虫の行動決定に影響する
Catecholamine receptor polymorphisms affect decision-making in C. elegans p.313
doi: 10.1038/nature09821
医学：カスパーゼシグナル伝達はミクログリアの活性化と神経毒性を制御する
Caspase signalling controls microglia activation and neurotoxicity p.319
doi: 10.1038/nature09788
生化学：IκBキナーゼβの結晶構造
Crystal structure of inhibitor of κB kinase β p.325
doi: 10.1038/nature09853
Letters
宇宙：土星の衛星エンセラダスのオーロラのフットプリント
The auroral footprint of Enceladus on Saturn p.331
doi: 10.1038/nature09928
材料：光で修復可能な超分子ポリマー
Optically healable supramolecular polymers p.334
doi: 10.1038/nature09963
地球：衛星軌道から行われた火星火山地域の地球化学的観測から推測される火星の熱史
Thermal history of Mars inferred from orbital geochemistry of volcanic provinces p.338
doi: 10.1038/nature09903
生態：代謝的トレードオフ、および適者とフラット・グループの維持
Metabolic trade-offs and the maintenance of the fittest and the flattest p.342
doi: 10.1038/nature09905
生理：胎盤は胎仔前脳への一時的なセロトニン供給源である
A transient placental source of serotonin for the fetal forebrain p.347
doi: 10.1038/nature09972
神経：皮質介在ニューロンの特定のサブタイプの発生にはニューロンの活動が必要である
Neuronal activity is required for the development of specific cortical interneuron subtypes p.351
doi: 10.1038/nature09865
発生：エフリンB群はニューロンの移動を調節するリーリン経路の必須構成因子である
Ephrin Bs are essential components of the Reelin pathway to regulate neuronal migration p.356
doi: 10.1038/nature09874
細胞：TRIM5はレトロウイルス・キャプシドの格子に対する自然免疫センサーである
TRIM5 is an innate immune sensor for the retrovirus capsid lattice p.361
doi: 10.1038/nature09976
構造生物学：Rafにより引き起こされるKSRのアロステリック転移はMEKリン酸化を促進する
A Raf-induced allosteric transition of KSR stimulates phosphorylation of MEK p.366
doi: 10.1038/nature09860
遺伝：真獣類哺乳動物は発生中のX染色体不活性化の開始に多様な方法を用いる
Eutherian mammals use diverse strategies to initiate X-chromosome inactivation during development p.370
doi: 10.1038/nature09872
遺伝：全ゲノム解析により明らかになるマウス組み換えホットスポットの新たな分子特性
Genome-wide analysis reveals novel molecular features of mouse recombination hotspots p.375
doi: 10.1038/nature09869
