Letter 発生:Polycomb抑制複合体PR-DUBのヒストンH2A脱ユビキチン化酵素活性 2010年5月13日 Nature 465, 7295 doi: 10.1038/nature08966 転写抑制因子であるPolycombグループ(PcG)タンパク質は、動物における細胞運命決定や幹細胞多能性の維持から、植物における開花期の制御にいたる幅広い過程を制御している。ショウジョウバエ(Drosophila)では、遺伝学的な研究により15以上の異なるPcGタンパク質が同定されており、それらはホメオティック(HOX)遺伝子などの発生調節遺伝子を抑制して細胞内で不活性なままにさせておくために必要とされる。生化学的な解析により、これらのPcGタンパク質は、標的遺伝子のクロマチンに結合してそれを修飾する複数の異なる多タンパク質複合体に存在することがわかっている。これらの複合体の中で、PRC1(Polycomb repressive complex 1)とそれに関連するdRAF(dRing-associated factors)複合体は、ヒストンH2Aのモノユビキチン化に対するE3リガーゼ活性を有する。本研究では、ユビキチンC末端加水分解酵素BAP1をコードする、特徴が明らかにされていないショウジョウバエPcG遺伝子calypsoを報告する。生化学的に精製したCalypsoはPcGタンパク質ASXを含む複合体に存在しており、Polycomb抑制脱ユビキチン化酵素(PR-DUB)と命名されたこの複合体は、ショウジョウバエのPcG標的遺伝子に結合する。再構成したショウジョウバエとヒトの組み換えPR-DUB複合体は、ヌクレオソームのH2Aからモノユビキチンを除去するが、H2Bからはしない。PR-DUBを欠失したショウジョウバエ複合体では、モノユビキチン化H2Aレベルの強い上昇がみられる。Calypsoの触媒活性を破壊する変異やASXサブユニットの欠失では、in vitroでH2Aの脱ユビキチン化の消失が、in vivoでHOX遺伝子抑制解除がみられる。したがってPolycomb遺伝子抑制により、PRC1とdRAFによるH2Aユビキチン化と、PR-DUBによるH2A脱ユビキチン化の間の動的なバランスがとられるのかもしれない。 Full Text PDF 目次へ戻る