Letter

生化学:クモ糸タンパク質の自己集合はpH感受性のリレー機構により制御されている

Nature 465, 7295 doi: 10.1038/nature08962

自然界に存在する高性能重合体であるクモ糸は、同一配列が反復している領域の両側に、保存された非反復型ドメインが存在するという特殊なタンパク質スピドロインからなる。スピドロインは、高濃度の紡糸原液として貯蔵されている。糸の形成の際には、分子間で反復領域どうしの相互作用が起こり、これが強度と弾性をもたらす。しかし、この自己集合に先だってスピドロイン凝集が起こるのを防止する仕組みは、まだはっきり解明されていない。紡糸装置内でのpH低下(6.3まで)、塩の組成変化、せん断力が、クモ糸の固体への変化を引き起こすと考えられているが、分子レベルの詳細はわかっていない。スピドロインの反復配列数個とカルボキシ末端ドメインで構成された小型スピドロインは、pHに関係なくメートル単位の長さのクモ糸様繊維を形成する。この小型スピドロインに、キシダグモ科のEuprosthenops australisのしおり糸由来の主管足瓶嚢腺(major ampullate)スピドロイン1のアミノ末端ドメイン(NT)を組み込むと、pH値が6.3程度では電荷に依存した急速な自己集合が起こるが、pH7以上で凝集を遅くすることがわかった。分解能1.7 Åで決定されたX線結晶構造から、NTは双極性で逆平行5本ヘリックスバンドル構造のサブユニットからなるホモ二量体であることが示されたが、これと類似の構造は知られていない。二量体というNTの全体構造と電荷分布は、クモ類の進化を通して、またすべての型のスピドロインで保存されていると予想される。これらの結果は、N末端ドメインが貯蔵中に時期尚早な凝集が起こるのを妨げ、出糸管中でpHが低下するのにつれて自己集合を加速することでスピドロインの集合を調節するという、リレーに似た機構を示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度