Letter 組織工学:筋肉の機械的特性を模倣するように設計された人工生体材料 2010年5月6日 Nature 465, 7294 doi: 10.1038/nature09024 筋肉の受動的弾性の大部分は、巨大な筋タンパク質タイチンのI帯部分によって支配されている。タイチンは複雑な分子のばねであり、個々に折りたたまれた一連の免疫グロブリン様ドメインと、大部分が構造化されていない特有の配列部分からできている。この2つの機械的要素は異なる機械的特性をもち、両者が組み合わさって、筋肉にしかるべき受動的弾性を与えている。この受動的弾性は、強度、伸展性、弾力性の独特の組み合わせである。単一分子原子間力顕微鏡(AFM)を用いた研究で、完全な筋原繊維に存在するタイチンの巨視的挙動は、単一分子レベルで測定されるその機械的要素の機械的特性の組み合わせによって再構成できることが示された。本論文では、性質がよくわかっているタンパク質ドメインGB1とレジリンとの組み合わせによって、タイチンの分子構造を模倣する人工的なゴム状弾性タンパク質について報告する。この人工ゴム状弾性タンパク質は、光化学的に架橋させて固形の生体材料に成型できることがわかった。この生体材料は、ひずみが小さい場合には、高い弾力性を示すゴムのような材料として振る舞い、ひずみが大きい場合には、エネルギーを効果的に散逸させることによって、緩衝材のような材料として振る舞う。こうした特性は、生理学的範囲内のサルコメア長の筋肉がもつ受動的弾性に似ており、この材料は筋肉を模倣する新たな生体材料となる。この生体材料の機械的特性は、ゴム状弾性タンパク質の組成調節によって微調整でき、さまざまな種類の筋肉を模倣する生体材料を開発する機会が得られる。この生体材料は、人工筋肉の骨格や基質として、組織工学分野への応用が期待される。 Full Text PDF 目次へ戻る