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細胞:酵母では足場タンパク質Ste5がスイッチ様の切り替えによる接合の決定を直接制御している

Nature 465, 7294 doi: 10.1038/nature08946

生物の進化によって、特定の接合相手を選ぶことにより適応度を上げられるような多数の新しい特徴が生じた。その中には、二次性徴や行動パターン、化学誘引物質とそれに対応する感知機構などがある。一倍体の出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeは、相手が分泌するフェロモンの濃度勾配をマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達ネットワークを介して判断して、接合相手を選択する。酵母が接合するかどうかは、弱いフェロモンシグナルを除外できるような「全か無か」、すなわちスイッチ様の応答で決定される。つまり、接合相手が十分に近くにいて、フェロモンが限界濃度以上のときにだけ反応することで、不適切な状況での接合が避けられる。しかし、このスイッチ様の接合決定を制御する分子機構は、ほとんど解明されていない。今回我々は、足場タンパク質Ste5の4か所のリン酸化部位に対して、MAPKのFus3とホスファターゼPtc1がリン酸化の調節で競合することによって、スイッチ機構が生じるのを明らかにする。競合によってFus3がSte5からスイッチのように解離するが、これがスイッチ方式による接合応答の発生に必要である。したがって、接合の決定はフェロモン経路の初期段階に迅速に行われる。これはおそらく、接合相手となる可能性のある酵母を競争者に奪われるのを避けるためだろう。我々は、Fus3–Ste5–Ptc1回路の構造が、これまで知られていなかった、高感度でありながら、これら3つのタンパク質の濃度変化に対してはロバストな機構を作っていると考える。このロバスト性が、個体間の確率的あるいは遺伝的差異にかかわりなく、確実に接合が起こるのを助けている。細胞運命決定の直接的な制御因子というSte5の役割は、情報処理の特異性と効率を高めるという足場タンパク質の既知の機能の範囲を広げるもので、高等生物でも同様な機構が細胞の決定を制御している可能性がある。がんではこのような機構が壊れているのかもしれない。

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