Letter

材料:ぬれたクモ糸上での方向性のある水収集

Nature 463, 7281 doi: 10.1038/nature08729

植物界、動物界のいずれでも、水との相互作用、つまりぬれ性を制御するマイクロメートルおよびナノメートルスケールの特異な構造的特徴を有する生体表面は多数存在する。砂漠の甲虫は興味深い例の1つで、背中にある疎水域と親水域からなるマイクロメートルサイズのパターンを使って、湿った空気から水を集めている。露のしずくでみごとに飾られたクモの巣からもわかるように、クモの糸も空気から水を効率よく集めることができる。今回我々は、篩板をもつクモであるタイリクウズグモ(Uloborus walckenaerius)の捕獲糸の水収集能力が、ぬれた後に形成される独特な繊維構造によるものであることを示す。この「湿潤下で再構成される」繊維は、ランダムな向きに並んだナノ原繊維からなる周期的な紡錘状のこぶが、整列したナノ原繊維からなる接合部で隔てられているという特徴をもつ。これらの構造的特徴から、紡錘状のこぶと接合部との間に、表面エネルギー勾配とラプラス圧力差が生じる。これら両方の要因が一緒に働くと、連続的凝結と紡錘状のこぶ周辺で方向性のある水滴収集が起こる。以前に、サブミリメートルサイズの液滴が、表面エネルギー勾配またはラプラス圧力差によって動かされたことがある。しかし、これまでは、どちらか一方の力を使うだけでは、マイクロメートルサイズの液滴の動きを妨げる、さらに大きなヒステリシス効果に打ち勝つことができなかった。クモ糸は、これら両方の駆動力をうまく活用することで、この課題を克服している。我々は、この発見から着想を得てクモ糸の構造的特徴を模倣し、方向性のある水収集能力を示す人工繊維を設計した。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度