Letter 生化学:インフルエンザM2プロトンチャネルのアマンタジン結合部位の脂質二重層中での構造 2010年2月4日 Nature 463, 7281 doi: 10.1038/nature08722 インフルエンザAウイルスのM2タンパク質は、膜を貫通する四量体プロトンチャネルで、抗ウイルス薬アマンタジンやリマンタジンの標的である。これらの薬物に対する耐性は、パンデミックを引き起こしたH1N1型などの多くのインフルエンザ株に対する有効性を損なう。最近解明されたM2(22–46)の結晶構造では、チャネル孔のアミノ末端側の半分に1個のアマンタジン分子に起因する電子密度が観察され、物理的閉塞が阻害機構であることを示している。だが、M2(18–60)の溶液NMR構造では、へリックスのカルボキシ末端側の脂質に面した表面に結合した4つのリマンタジンが示され、アロステリックな阻害機構が示唆された。今回我々は、固体NMR分光法により、リン脂質二重層内にあるM2には2つのアマンタジン結合部位が存在することを示す。1個のアマンタジン分子が結合する高親和性部位は、アミノ末端側のチャネル内腔に位置し、アマンタジン耐性ウイルスでは変異している残基に囲まれている。タンパク質とアマンタジンの距離の定量により、高親和性部位の構造が分解能0.3 Åで得られた。第二の低親和性部位は、二重層内の薬物が高濃度に達したときにだけ、カルボキシ末端側のタンパク質表面で観察された。薬物の配向と動態は、2H NMRで示されたように、これら2つの部位で異なっている。以上の結果は、アマンタジンがM2チャネルを物理的に閉塞することを示しており、インフルエンザウイルスに対する新たな抗ウイルス薬開発の道を開く。この研究は、固体NMRによって小分子と膜タンパク質との相互作用が明らかにされ、それらが作る複合体の構造の高分解能での決定が可能であることを示している。 Full Text PDF 目次へ戻る