マダガスカルは、世界で最も風変わりで、地域固有な多様かつ絶滅が危惧されている動物群の1つが生息する場所である。この独特で不均衡な生物多様性を説明するために、G G シンプソンは「一か八か仮説」を提唱した。それによるとマダガスカルに現在生息する哺乳類系統の祖先たちは、アフリカから漂流物に乗ってやってきたとされる。これは、動物たちがどのようにして新開地に移住したかについての生物地理学および進化論上の重要な仮説の1つだが、その妥当性は疑問視されている。いくつかの研究は、マダガスカルへの漂流物による移動が海流と一致しないことや、陸橋が移動者たちの通路になったこと(陸橋仮説)を示唆している。本論文では、海流が動物たちをこの島に運んだ可能性があることを示し、「陸橋仮説」とは整合しない証拠を明らかにする。古地理の再構築と古海洋のモデル作製により、古第三紀には、強い表層海流がモザンビーク北東部およびタンザニアからマダガスカルへ、東向きに流れていたことが見いだされた。これはまさに「一か八かプロセス」に必要とされるものである。その後、マダガスカルは赤道環流に向かって北へ移動し、その結果、その水域の海流系が変化して、マダガスカルからアフリカへ西向きに流れる現在の形になった。このことによって、中新世初期にげっ歯類と食肉類が到着してから以後、完全に非水生の陸上動物がマダガスカルに移住していない理由が説明できるかもしれない。したがって、古海流の流向を正しく推定するならば、新生代では漂流物による移動が、海を越えた分散の主要な手段であった可能性が考えられる。