Letter 脳:ヒト記憶ネットワーク内にグリッド細胞があることの証拠 2010年2月4日 Nature 463, 7281 doi: 10.1038/nature08704 自由に動き回るラットの内側嗅領皮質のグリッド細胞は、自分の位置を著しく周期的に表現する。これは非常に特異的な計算機構が働いていることを示している。しかし、ヒトにもグリッド細胞が存在するかどうか、あるとしたら脳内のどこに分布しているかは、わかっていない。今回ラットの内側嗅領皮質で、運動方向によって調節されるグリッド細胞の好適発火方向が、格子状に並んでおり、遅く走るときより速く走るときのほうが、グリッド細胞発火の空間配置がより明瞭に表れることを示す。複数のグリッドが相互に並んでいるため、ヒトでも機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使って巨視的な観察が可能だと予測した。そこで、被験者に、ラットの餌探し課題と同等な課題をバーチャルリアリティー環境中で課して、この信号の検出を試みた。fMRI 信号の発生と順応は、走る方向について速度に依存した六回回転対称性を示した。信号は、内側嗅領皮質/海馬台、後および内頭頂葉、外側頭葉、内前頭前野の領域の神経網で検出された。中でも右内側嗅領皮質の信号は強く、内側嗅領皮質全体にわたる方向信号のコヒーレンスは、空間記憶の成績と相関していた。今回の研究は、システム神経科学において単一ユニットの電気生理学記録とfMRIとを結びつけた場合に考えられる有効性を示している。また、これらの結果は、ヒトにもグリッド細胞様の神経表現が存在することの証拠となり、特定の型の神経表現が、空間認知や自伝的記憶を支える領域間ネットワークにかかわっていることを示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る