Letter 細胞:腫瘍抑制因子p53の経路と体細胞の再プログラム化との関連 2009年8月27日 Nature 460, 7259 doi: 10.1038/nature08311 体細胞から人工多能性幹(iPS)細胞への再プログラム化は、多能性因子およびがん遺伝子の発現によって可能となるが、iPS細胞が作製される効率の低さとがん化のリスクが、この非常に有効な手法を臨床に応用する際の妨げとなっている。我々は、体細胞の再プログラム化の効率を制限している機序に関する研究を行い、上記の2つの問題について検討した。今回の報告では、再プログラム化因子がp53(マウスではTrp53、ヒトではTP53としても知られる)経路を活性化することを明らかにする。マウスの繊維芽細胞では、p53の負の調節因子の1つを変異型として発現させたり、p53遺伝子またはその標的遺伝子p21(Cdkn1aとしても知られる)を欠失あるいは低下させたりする、または再プログラム化に伴って誘導されるアポトーシスを拮抗することによって、p53を介するシグナル伝達経路を抑制すると、再プログラム化の効率が向上する。特に、p53タンパク質の発現量を低下させると、Oct4(Pou5f1としても知られる)およびSox2の2因子だけを用いて、生殖細胞系列に寄与するキメラマウスとなりうるiPS細胞を、繊維芽細胞から作製することができた。さらに、p53のサイレンシングは、ヒト体細胞の再プログラム化効率も大きく向上させた。これらの結果は、体細胞の再プログラム化の仕組みを理解する上での手がかりを与え、最低限のがん遺伝子の使用でさらに効率よく再プログラム化を行わせる新規の経路の存在を示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る