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細胞:Ink4/Arf 遺伝子座はiPS細胞への再プログラム化の障壁となる

Nature 460, 7259 doi: 10.1038/nature08290

分化後の細胞が、3つの転写因子Oct4(Pou5f1としても知られる)、Klf4、Sox2によって誘導多能性幹(iPS)細胞へと誘導される再プログラム化については、その機序は依然としてよくわかっていない。Ink4/Arf遺伝子座は、3つの強力な腫瘍抑制因子p16Ink4a、p19Arf、p15Ink4bをコードする遺伝子群Cdkn2a-Cdkn2bによって構成され、これらの腫瘍抑制因子群は、基本的には分化後の細胞に発現し、異常な分裂促進シグナルによってその発現が増加する。今回我々は、iPS細胞でも胚性幹(ES)細胞と同様に、この遺伝子座が完全に不活化され、2価のクロマチンドメインというエピジェネティックな印を獲得し、分化後に再活性化する能力を維持していることを示す。再プログラム化の際の細胞培養条件によってInk4/ Arf遺伝子座の発現が促進されることから、増殖と再プログラム化を可能にするためには、この遺伝子座の不活化が重要であることが、さらにはっきりする。実際に、この3つの因子は発現後すぐに協力してInk4/Arf遺伝子座を抑制し、それに伴って、「幹細胞性」を示す最初の分子マーカーが出現する。この発現抑制は腫瘍性タンパク質ラージTを保有する細胞においても生じるが、ラージTはInk4/Arf遺伝子座によって制御される経路を不活化する機能をもつことから、この遺伝子座のサイレンシングは再プログラム化に本来備わってものであり、選択過程で生じる結果ではないことが示される。Ink4/Arf遺伝子座の遺伝的阻害は、iPS細胞の作製効率に極めて良好な影響を与え、再プログラム化の速度およびiPS細胞のコロニー数をいずれも増加させた。マウス細胞では、Ink4aよりもむしろArfがp53(Trp53によってコードされる)およびp21(Cdkn1aによってコードされる)を活性化することが再プログラム化の主な障壁となっているが、ヒトの繊維芽細胞では、ARFよりもINK4aが重要である。さらに、生物の老化によってInk4/Arf座の発現が増加する結果、老化した生物の細胞では再プログラム化効率は低下するが、この遺伝子座の短鎖ヘアピンRNAを用いた阻害により、この欠陥は救済される。以上の結果から、Ink4/Arf座のサイレンシングが再プログラム化の律速因子であり、このサイレンシングを一時的に阻害すれば、iPS細胞の生成が著しく向上することが期待される。

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