Letter 物理:スピン螺旋ディラック輸送領域における調整可能なトポロジカル絶縁体 2009年8月27日 Nature 460, 7259 doi: 10.1038/nature08234 螺旋ディラックフェルミ粒子は、質量がゼロの相対論的粒子として振る舞う荷電粒子であり、固有の角運動量(スピン)はその並進運動量に固定されている。この粒子は、本質的に新規な現象を固体物理学にもたらすカギになるものとして提案されている。よく知られた例には、磁気-電気結合の異常な量子化、それ自身が反粒子になっているハーフフェルミ粒子状態、そしてボーズ-アインシュタイン凝縮体の電荷分数化があり、これらはすべて、さまざまなグラフェンの従来型ディラックフェルミ粒子では不可能である。螺旋ディラックフェルミ粒子はこれまでのところ、必要なスピン敏感な測定が十分行われておらず、またこのようなフェルミ粒子は、グラフェンやビスマスなどの相対論的電子を受け入れる従来型物質に存在することが禁止されているため、とらえ所がないままであった。最近、螺旋ディラックフェルミ粒子は、特定の型のトポロジカルに秩序化した絶縁体(スピン-軌道起源のバルク絶縁性ギャップと、時間反転対称性による散乱から保護された表面状態をもつ物質)の端に存在し、またそれらの特異な性質は、この絶縁体をいわゆるトポロジカル輸送領域へ調整すればアクセスできると提案されている。しかし、螺旋ディラックフェルミ粒子は既存のトポロジカル絶縁体では観測されていない。本論文では、スピン画像化分光法と運動量分解分光法、バルクの電荷補償、ホール輸送測定、および表面量子制御を組み合わせて、ビスマス系物質群に調整可能なトポロジカル絶縁体を実現し、特性を評価した結果を報告する。我々の結果によって、ほぼ100パーセントスピン分極した自明でないベリー位相を運ぶ、スピン運動量が固定されたディラック円錐が明らかになった。これはクラマース点近傍でトポロジカルフェルミ粒子密度が調整可能であり、長い間求められていたトポロジカルスピン輸送領域へ駆動できる。観測したトポロジカルノード状態は最高300 Kでも十分保護されることが示された。室温のトポロジカル秩序と自明でないスピンテクスチャーが、化学量論的なBi2Se3.Mx(Mxは表面ドーピング、あるいはゲート制御を表す)において実証されたことは、トポロジカル絶縁体に関するグラフェンに準じた研究への道を開き、また観測されたスピン分極端チャネルをおそらくは室温で将来のスピントロニクス技術や計算機技術への応用につなげるだろう。 Full Text PDF 目次へ戻る