Letter 生化学:原核生物の仮想プロトンポンプの3.2 Å分解能での構造 2009年8月20日 Nature 460, 7258 doi: 10.1038/nature08201 腸内細菌は、哺乳類の腸にたどり着くには、胃を通過しなくてはならない。このような細菌の多くは、過酷な胃環境(pH 1.5〜4)への曝露を、強酸耐性応答を備えもつことで生き延びている。こうした反応の1つである大腸菌(Escherichia coli)のアルギニン依存系は、細胞生理学、分子遺伝学やタンパク質生化学のレベルで研究されてきた。この多タンパク質系は、酸の攻撃投与の間に、アルギニンの脱炭酸反応から生じる自由エネルギーを用いて、プロトンを細胞内から持続的に汲み出すことにより、細胞質をpH 5以上に維持する。この過程の核心となるのは、内膜にあると考えられているAdiCとよばれるプロトンポンプで、胃液からL-アルギニンを取り込み、その脱炭酸生成物であるアグマチンを放出する。AdiCは膜タンパク質のAPCスーパーファミリーに属し、一酸化窒素合成のためのアルギニン輸送、膵臓のβ細胞からのインスリン放出促進などの多くの生物学的役割にかかわるアミノ酸やポリアミン、有機陽イオン輸送を行っている。またAdiCが不適切に過剰発現されるような場合は、急速に増殖する種類の腫瘍細胞へのアミノ酸の提供にかかわっている。APC輸送体の高分解能での構造と詳細な輸送機構は現在わかっていない。今回我々は、AdiCの分解能3.2 Åでの結晶構造について述べる。このタンパク質は、外見的には関係がない、ほかの4つの輸送タンパク質ファミリーでみられるのと非常によく似た膜貫通構造をもち、基質が結合していない、外向きに開いた構造をとっている。 Full Text PDF 目次へ戻る