Article

進化:微生物による環境変化の適応的予測

Nature 460, 7252 doi: 10.1038/nature08112

一部の微生物の自然生息環境は不規則に変動するが、変動がより予測可能な生息環境に棲む微生物では、次の環境変化に前もって備える機会があると考えられる。微生物は、古典的なパブロフの条件付けと同じように、環境刺激が出現する時間的順序に適応することにより、環境刺激を予期するように進化した可能性がある。本論文では、大腸菌(Escherichia coli)および酵母(Saccharomyces cerevisiae)という2種類のモデル微生物で、環境変化予期の証拠を示す。生態環境で通常は早期に出現する刺激にあらかじめ曝露しておくと、その微生物が第二の刺激に遭遇したときの適応度が向上することから、予期が適応形質であることが明らかになる。また、実験室での進化実験で、第一の刺激のみに繰り返し曝露した大腸菌株では、条件付け反応がみられなくなった。分子レベルの詳細な解析から、自然の刺激の時間的順序は調節ネットワークの配線中に組み込まれており、早期の刺激が後期の刺激に必要な遺伝子を事前に誘導するのに対し、後期の刺激が誘導するのは後期の刺激自体への対処に必要な遺伝子のみであることがわかった。この研究は、環境の予期が進化の過程を通じて繰り返し選択されてきた適応形質であり、それ故、生物において普遍的なものと考えられることを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度