Letter 物理:反強磁性磁区揺らぎの直接測定 2007年5月3日 Nature 447, 7140 doi: 10.1038/nature05776 強磁性体から磁区運動が原因となって発生する磁気ノイズの測定は、ほぼ100年前に初めて行われ、科学技術を大きく支えてきた。反強磁性体は、正味の外部磁気双極子モーメントをもたないが、それでも電子スピンの周期配列が巨視的な距離にわたって広がっており、磁気ノイズをみせるはずである。しかしこれは、強磁性体の特徴である巨視的スケールではなく、原子間距離の数倍のオーダーの空間波長でサンプリングする必要がある。本論文では、クロム元素の反強磁性に伴うスピン密度波と電荷密度波のナノメートルスケールの超構造の揺らぎを直接測定した結果を報告する。今回用いたX線光子相関分光法では、コヒーレントなX線回折がスペックルパターンを生じ、このパターンが特定の磁区配置の「指紋」となる。このパターンの時間発展は、磁壁が数マイクロメートルの範囲にわたって前進・後退することに相当する。本研究では、反強磁性磁壁エンジニアリングで有用な測定手段を実証しただけでなく、最も簡単な反強磁性体のスピンダイナミクスに関する基礎的な知見も明らかにしている。すなわち磁壁運動は、100 K以上の温度では熱活性化されるものの、これより低温では熱活性化されず、40 K以下に冷却すると量子揺らぎと合う有限な値で飽和する速度をもつようになる。 Full Text PDF 目次へ戻る