Letter 進化:イソギンチャクのWnt遺伝子ファミリーは予想外に複雑である 2005年1月13日 Nature 433, 7022 doi: 10.1038/nature03158 Wnt遺伝子ファミリーは、動物の発生やヒト疾患で細胞の運命を支配する分泌型シグナル伝達分子をコードしている。その重要性にもかかわらず、後生動物に特異的なこのタンパク質ファミリーの進化はよくわかっていない。脊椎動物では12群のサブファミリーが明らかになっているが、対応する遺伝子が脱皮動物(ショウジョウバエや線虫など)にあるのはそのうち6群のみである。今回我々は、刺胞動物の中で原始的分類群に入るイソギンチャクの一種Nematostella vectensisから12個のWnt遺伝子を単離したことを報告する。刺胞動物は二胚葉動物であり、左右相称の後生動物の姉妹群にあたる。N. vectensisのWnt遺伝子群の系統発生解析から、そのWntファミリー内にはこれまで予想されていなかった祖先由来の多様性があることがわかった。刺胞動物と左右相称動物は既知のWnt遺伝子サブファミリー12群のうち少なくとも11群を共有しており、どうやら旧口動物の系統で5群のサブファミリーが失われたらしい。N. vectensisの胚発生に際したWnt遺伝子の発現パターンからみて、Wnt類は原腸形成でそれぞれ異なる役割を果たしており、プラヌラ幼生の一次軸に沿って発現領域が連続的にオーバーラップしている。この予想外に複雑な一連のWntファミリーシグナル伝達因子群は、カンブリア紀爆発より少なくとも1億年前にあたるおよそ6億5,000万年前の初期多細胞動物で進化した。これにより、真正後生動物の体制の多様化にWnt遺伝子が重要な働きをしたことは明らかである。 Full Text PDF 目次へ戻る