Letter 発生:N-CoRは神経幹細胞のアストログリアへの分化を制御する 2002年10月31日 Nature 419, 6910 doi: 10.1038/nature01156 神経幹細胞の維持と分化を制御する遺伝子プログラムの解明は、幹細胞研究における主要な問題である。ほとんど全ての神経幹細胞は、未分化状態を維持し、繊維芽細胞増殖因子‐2 (FGF2)の作用により自己再生を行う能力を保持する。本研究で我々は、転写抑制因子である核内受容体コリプレッサー(N-CoR)の遺伝子を破壊したマウス胚から得られた脳皮質の神経幹細胞をFGF2処理すると、自己再生異常とアストログリア様の細胞への自発的な分化を示すことを見出した。このことから、N-CoRは神経幹細胞における重要な制御因子であると考えられる。分化を誘導するサイトカインの1つである毛様体神経栄養因子(CNTF)で、野生型マウスの神経幹細胞を刺激すると、ホスファチジルイノシトール3‐キナーゼ/Akt1キナーゼに依存したN-CoRのリン酸化が起こり、これと時間的に対応してN-CoRの細胞質への移行が見られた。これはサイトカインによって誘導されるアストログリア細胞への分化と、その細胞系譜に特徴的な遺伝子発現において、欠かせない仕組みであることがわかった。また、N-CoRの特異的結合部位へのプロテインホスファターゼ‐1の移動は、N-CoRの細胞内局在に対して上記とは逆の効果を及ぼす。我々は、対立的な酵素活性によって調節を受ける、N-CoRによる抑制が、神経幹細胞のグリア細胞への分化を抑制する重要な機構であると提唱する。 Full Text PDF 目次へ戻る