Letter 生態:冬眠型哺乳類の分布に対するエネルギー的制約への気候の関与 2002年7月18日 Nature 418, 6895 doi: 10.1038/nature00828 人間活動が引き起こした地球規模の気候変動による影響を予測するには、気候が生物の地理的分布にどのように結びつくかを理解する必要がある。動物の分布を説明するには一般に、エネルギー的な制約が引き合いに出され、生理的なパラメータが分布勾配に沿って変化することが知られている。しかし、気候と動物の地理的分布の因果関係の本質はほとんどわかっていない。今回我々は、さまざまな気候条件下での哺乳類の冬眠の成否を予測する生体エネルギー論モデルを考案した。そして一例として、冬眠エネルギー特性の定量化が進んでいるトビイロホオヒゲコウモリ(Myotis lucifugus)を使い、このモデルをパラメータで表示した。我々のモデルによる予測では、冬季に必要なエネルギー総量に対して及ぼす環境温度の影響は明白であり、冬眠が成就するには冬眠場所の温度と冬季の長さの両条件がかなり幅の狭い範囲でそろわねばならない。トビイロホオヒゲコウモリの微小生息場所と北方の分布限界はモデル予測と一致しており、このことからして、冬眠エネルギーの温度依存性が、この生物種の地理的分布域を制限していると考えられる。気候変動の見積もりを我々のモデルに組み込むと、今後80年以内に越冬型コウモリが生息域を明確に北上させるという予測が出る。生体エネルギー論は、気候変動の影響を予測するのに求められる、気候と生物の地理的分布との簡略な連結法となりうる。 Full Text PDF 目次へ戻る