2026年2月号Volume 23 Number 2
基礎研究が未来を変える原点に
基礎研究は「何の役に立つのか分からない」と軽んじられがちである。しかし、DNA鑑定、MRI、薄型テレビ、肥満症・糖尿病治療薬、RNAi薬、有鉛ガソリン廃止につながった鉛汚染の解明など、私たちの生活を支える技術の背後には、長年の地道な探究がある。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「強力なインフレーションモデルが提示する出口戦略」「カメラが捉えたミャンマーの地震」「アンデスの人々の物々交換の場としていた『穴ぼこ市場』」「長めの散歩が心臓の健康への正しい一歩」、他。
News in Focus
DNAの構造を解明したジェームズ・ワトソンが死去 ― 彼の功績と科学界の苦悩
DNAの構造をフランシス・クリックと共同で解明したワトソンは、米国のコールド・スプリング・ハーバー研究所の発展に貢献し、有名な教科書を執筆した一方で、人種差別的・性差別的な発言をして物議を醸した。
中国が新しい科学者ビザを導入し世界のトップ人材誘致に「本腰を入れる」
中国は人工知能、ロボット工学、新材料の分野で、若手研究者の移住条件を緩和している。
米国の博士課程の入学者受け入れ枠が軒並み減少
トランプ政権下の研究資金配分に関する不透明感から、学生の受け入れを全面的に中止する博士課程プログラムも出てきた。
遺伝子編集で心臓病を予防できるか?
小規模臨床試験の結果は、ありふれた疾患に対する遺伝子編集療法開発への関心の高まりを浮き彫りにしている。
世界の温室効果ガス排出量はいつピークを打つのか
温室効果ガス排出量は、今後数年で減少に転じる可能性があると科学者は言う。その鍵を握るのは、中国の動向だ。
ナポレオン軍の壊滅:これまで考えられていなかった感染症の関与
モスクワからの撤退中に死亡した兵士のDNAから、死亡者数を増加させたと考えられる2種類の細菌感染症が明らかになった。
論文出版へのプレッシャーは強まり研究時間は減っている
アンケート調査の結果、学者にのしかかる出版へのプレッシャーは増大している一方で、研究に割けるリソースは減少していることが明らかになった。
幻覚剤と不老不死:MAHA健康サミット
米国のJ・D・バンス副大統領とロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉省長官も登壇した「MAHAサミット」は、米国の保健政策を動かしているものを感じさせるイベントだった。
Features
世界を変えた基礎科学の発見7選
米国政府は基礎科学研究予算の大規模な削減を進めているが、肥満症・糖尿病治療薬セマグルチドもMRI装置も薄型テレビも数十年前の基礎研究から生まれたものである。
ヒトに必要なタンパク質量はどれくらいなのか?
フィットネス系インフルエンサーは超高タンパク質食を勧めているが、ヒトが使えるタンパク質量には限界があることが、研究から分かってきた。
グーグル・ディープマインドはAI開発競争の先頭を走り続けられるか?
ディープマインド社は、AIを使って世界を変えるような科学を行うために設立され、実際にノーベル賞を受賞した。しかし大規模言語モデルの登場は、同社の未来に深い疑問を投げ掛けている。
とっておき年間画像特集2025
2025年も、全身タトゥーのクマムシ、異世界めいた赤い稲妻、ベラ・C・ルービン天文台の息をのむような初画像など、多くの科学画像が公開されました。Natureが選んだ2025年のよりすぐりの科学画像を紹介します。
News & Views
ランタノイド発光材料を電流で励起する
ランタノイドイオンを含むナノ粒子は、優れた発光材料だが応用は限られていた。今回、有機分子の添加によって、ランタノイド含有ナノ材料を電流で励起できるようになることが示され、幅広い応用の可能性が開かれた。
火星に雷はあるか?
NASAの火星探査車「パーサビアランス」のマイクが、砂塵嵐の中の雷の特徴である音と電磁波信号を偶然記録した。
幅広い特異性を持つ抗毒素による治療法開発に前進
ヘビ咬傷に対する治療法は改善が求められている。今回報告された新たな手法は、臨床で使えるより効果的な治療法の開発につながる可能性がある。
AIが医療記録から病気の発症を予測
今回、医療記録で訓練した人工知能(AI)モデルが、個人の病歴を用いて1200種類以上の疾患の発症の可能性とその時期を予測することが報告された。
Advances
腸内ウイロームの姿
ヒトの消化管にはウイルスがたくさんいる。
音で触る
イルカの反響定位は“見る”というより触っているようだ。
Where I Work
Neema Mduma
Neema Mdumaは、ネルソン・マンデラ・アフリカ科学技術研究所(タンザニア・アルーシャ)の計算機科学者。
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