Letter

テラヘルツレーザーの量子限界に近い周波数ゆらぎ

Nature Photonics 6, 8 doi: 10.1038/nphoton.2012.145

量子カスケードレーザーは、電子バンド構造工学で実現された最も優れた成果と考えることができ、自然界には存在しない特性を量子設計によって目的にあわせて持たせた人工材料の作製法を示す実例になっている。さらに、量子カスケードレーザーは、レーザー放射の固有線幅など、量子的性質によって決まる基本的な物理変数の強力な実験基盤として使うことができる。量子カスケードレーザーのレーザー線幅は、レーザーキャビティで発生する、自然放出光の光子数と黒体放射の光子数に大きく影響される。今回我々は、遠赤外量子カスケードレーザーでの量子限界に近い線幅値が得られたことを示す実験的証拠について報告する。熱光子による線幅の広がりにもかかわらず、測定された線幅はこれまでのいかなる半導体レーザーで見られたものよりも狭い。我々は前例のない感度レベルで雑音測定を行うことにより、利得媒質工学が重要な役割を果たすことを示した。また、適切に設計された半導体ヘテロ構造レーザーを使えば、レーザー固有の位相雑音を引き起こすメカニズムを解明できることを示し、デバイスの特性と量子限界線幅との関連を明らかにした。

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