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ナノプラズモニック光学アンテナによる個々の生細菌の振動酵素活性の動的モニタリング

Nature Photonics 17, 10 doi: 10.1038/s41566-023-01265-2

外膜小胞(OMV)は、細菌の外膜に由来する細胞外構造である。OMVは、タンパク質、核酸、酵素などの多様な内容物を運び、細菌同士のコミュニケーションや宿主細胞とのコミュニケーションのために、細菌によって放出される。シグナル伝達酵素のキャリアとしてのOMVの役割を理解することによって、細胞間コミュニケーション、病因、バイオフィルムの形成などに関する知見が得られる。小胞の研究のために蛍光ベースの手法が用いられているが、酵素に基づく細胞コミュニケーションの実時間ライブモニタリングは、標識薬剤のフォトブリーチングや干渉といった望ましくない影響があるため、困難なままである。今回我々は、ナノプラズモニック光学アンテナによる、個々の生細菌における酵素アゾレダクターゼ(AzoR)の振動活性の無標識動的モニタリングについて報告する。今回のナノプラズモニックアンテナは、AzoRの存在によって散乱断面積が変化するブラックホール消光分子(BHQ-3)で修飾された金ナノロッドで構成されている。このアンテナによって、個々の生細菌によって放出されるOMVを介した長時間(数時間)かつ距離依存性(最長で3 μm)のAzoR検出が可能になる。我々は、さまざまな生息環境や細菌増殖段階において、周期的な振動酵素活性を観察した。また我々は、振動酵素活性が、隣接細菌間の振動シグナルの結合によって不均一な特徴を示すことも見いだした。シグナル伝達酵素の動的モニタリングは、細菌のコミュニケーション、病因、薬剤耐性の機構のさらなる理解への道を開く。

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