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振動アシストルミネッセンスによる単一分子の中赤外分光測定と検出

Nature Photonics 17, 10 doi: 10.1038/s41566-023-01263-4

中赤外(MIR, λ = 3~30 μm)における分子振動の室温検出には、実時間ガスセンシング、医用イメージング、量子通信など、数多くの応用がある。しかし、既存の技術は熱雑音による制限があるため、冷却半導体検出器に頼っている。この課題を克服する方法の1つは、シリコン技術を用いて単一光子の検出が容易に実現される高エネルギー可視波長(λ = 500~800 nm)に、低エネルギーMIR光子をアップコンバートすることである。この過程は、小さい衝突断面積と、MIRと可視光の波長ミスマッチの問題があるため、効率が制限されている。今回我々は、フランク・コンドン因子を通して結合した分子振動と電子状態からMIRと可視の両方への遷移がある分子エミッターを利用している。我々は、分子を集合させてMIRと可視の両方の波長で共振するプラズモニックナノ共振器を形成し、分子を電子吸収バンドより下に光学的に励起することによって、MIR光の変換を示した。アップコンバートされた信号が、増強された可視ルミネッセンスとして観測された。パーセル増強可視ルミネッセンスと増強された振動励起率を組み合わせることによって、10%を超える変換効率が得られた。また、MIR周波数に依存するアップコンバージョンによって、ナノ共振器に集合させた分子の振動の特徴が得られた。さらに、過渡的なピコ共振器形成によって、MIR光が単一分子レベルまで閉じ込められた。これによって、これまでの検出器では手が届かなかった単一分子のMIR検出と分光測定の実証が可能になる。

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