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菱面体的積層MoS2における自発分極によって誘起される光起電力効果

Nature Photonics 16, 6 doi: 10.1038/s41566-022-01008-9

ファンデルワールス物質における積層の仕方は、原子層間の結合を決定付けるため、物質の特性の要となる。最近、ゼロ度にそろえたファンデルワールス構造において、強誘電性(可逆的な自発電気分極を示す現象)が観測された。こうした人工的な積層では、単一ドメインのサイズは、角度のずれによって制限される。今回我々は、自然に菱面体的に積層したMoS2において、ずれのない剥離フレークに均一な自発分極が生じることを示す。我々は、この均一な分極と、誘起された脱分極場を利用して、グラフェン–MoS2系の高効率光起電力デバイスを構築している。数層MoS2は、大半の酸化物系強誘電体膜よりも薄い。このため、脱分極場を最大にし、原子レベルという薄さの極限においてその影響を調べることが可能になる。その一方で、同等の結晶において非常に均一な分極が生じており、実際的なスケールアップ方法が実現可能になる。今回のデバイスの外部量子効率は、室温において最大で16%である。これは、バルクの光起電力デバイスで観測された最高効率よりも1桁以上大きく、グラフェンにおける遮蔽の低下、励起子によって増強される光物質相互作用、超高速層間緩和に起因している。今回の研究結果によって、菱面体晶遷移金属ジカルコゲニドが、高速かつ高エネルギー効率の光検出やプログラム可能な極性などの応用向けに有望な候補になる。

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