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半導体リングレーザーにおける散逸カーソリトン

Nature Photonics 16, 2 doi: 10.1038/s41566-021-00927-3

散逸カーソリトンは、カー効果と分散の相互作用によって生じる自己組織化された光波である。散逸カーソリトンは、外部のポンプレーザーのパラメーターを意図的に調整することで非線形マイクロ共振器中に形成され、これによって超安定な周波数コムを増幅させるためのパラメトリックゲインが得られる。このような小型で電池駆動型のマイクロコムは、精密計測、広帯域通信、超高速光測距などの分野で破壊的技術となった。今回我々は、高速半導体をゲイン媒体とする、リング共振器で発生した散逸カーソリトンの実験的観測結果について報告する。リング共振器の適度なQ値は、量子カスケードレーザーの巨大な共振カー非線形性(Si3N4の100万倍以上)によって補償される。我々は、共振器の分散を操作することで、中赤外領域で明るい散逸カーソリトンの形成を観測した。2つの独立した手法により、ソリトンの波形とコヒーレンスが明らかになり、再構成された時間幅が約3 psであることが確認された。さらに、分散波を光学的にフィルタリングすることで、バックグラウンドのない3.7 psのソリトンパルスが実証された。今回の結果は、ソリトンマイクロコムのスペクトル範囲を中赤外波長に拡張するものであり、分子指紋領域での電池駆動型集積ターンキー分光器の実現につながると思われる。

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