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ペロブスカイトナノ結晶における極端なγ放射線耐性と高いシンチレーション収率

Nature Photonics 16, 12 doi: 10.1038/s41566-022-01103-x

放射線検出は、医療診断、国土安全保障、環境モニタリング、産業制御だけでなく、基礎科学研究においても極めて重要である。ハロゲン化鉛ペロブスカイト(LHP)は、電離放射線検出用の次世代シンチレーターや光導電体向けの高原子番号材料としてますます注目を集めている。従来材料に代わる信頼性が高くコスト効率の良い材料としてLHPの潜在能力を十分に引き出すには、LHPは、高線量の電離放射線下で高いシンチレーション収率と発光安定性を兼ね備える必要がある。我々の知る限りでは、LHPのシンチレーション効率とカイネティクスを最適化する決定的な解決策はこれまで考案されておらず、数キログレイを超える線量に対するLHPの放射線耐性については何も知られていない。今回我々は、CsPbBr3ナノ結晶が、1 MGyという高いγ放射線量に対して優れた放射線耐性を示すことを実証する。分光学的実験や放射計実験から、標準的なCsPbBr3ナノ結晶は、その欠陥耐性にもかかわらず、高密度表面欠陥において電子捕獲が起こり、そうした表面欠陥は合成後フッ素化によって除去されることが明らかになった。これによって、シンチレーション効率が500%以上増大し、市販のシンチレーターに匹敵するようになったが、依然として優れた放射線耐性レベルを維持していた。今回の研究結果は、超安定かつ高効率の放射線検出器におけるLHPの普及に重要な影響を及ぼす。

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