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厚さ1 μmの、効率が高く安定した有機発光ダイオード

Nature Photonics 16, 12 doi: 10.1038/s41566-022-01084-x

キャリア輸送層が厚い有機発光ダイオード(OLED)は、生産収率の高いOLED系ディスプレイや照明に望ましい。しかし、有機物質のキャリア移動度が低いため、厚いOLEDは必然的に動作電圧が高くなる。それに伴うジュール熱によって、構造欠陥や動作安定性の低下も生じる。今回我々は、厚さが1 μmを超えるが動作電圧が低い効率が高く非常に安定したOLEDを実証する。このOLEDには、正孔注入層としてMoO3/SimCP2が、正孔輸送層として厚い4,4′-(シクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(N,N-ジ-p-トリルアニリン) (TAPC)層が用いられている。我々は、900 nmを超える厚さのTAPCでのみ、オーミック正孔注入が生じ得ることを見いだした。我々は、この構成において、赤色OLEDで23.09%、緑色OLEDで22.19%、青色OLEDで7.39%の外部量子効率、1,000 cd cm−2において赤色OLEDで5.11 V、緑色OLEDで3.55 V、青色OLEDで6.88 Vの動作電圧を達成した。また我々は、TAPC層と電子ブロッキング層の間に薄いHAT-CN層を組み込んで、電子の漏洩を抑制した。本研究における赤色、緑色、青色のOLEDは、上記の性能を維持する一方で、初期輝度1000 cd cm–2において赤色で約5万5000時間、緑色で約1万8000時間、青色で約1600 時間という優れた外挿LT95動作寿命を示すことも特徴としている。我々は、今回の研究結果が、生産収率の高い大面積OLED系ディスプレイや照明への道を開くと考える。

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