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超広帯域テラヘルツ放射の効率の高い金属スピントロニクスエミッター

Nature Photonics 10, 7 doi: 10.1038/nphoton.2016.91

テラヘルツ電磁放射は、イメージングや分光法を含む多くの応用に極めて有用である。そのため、安価な低出力フェムト秒レーザー発振器で駆動される、1~30 THz窓をカバーする効率の高い卓上エミッターが強く望まれている。これまでの全固体エミッターは、電子電荷に関連する物理的特性しか利用しておらず、ギャップがかなり大きい発光スペクトルが放出される。今回我々は、電子スピンを利用して、概念的に新しいテラヘルツ放射源を実現している。この放射源は、超高速の光誘起スピン流、逆スピンホール効果、広帯域ファブリ・ペロー共鳴という、磁性金属多層膜における3種の基本的なスピントロニクス現象とフォトニクス現象を調整して用いている。解析モデルに導かれて、このスピントロニクスに基づく方法から、系統的に最適化する類のない可能性が得られた。我々は、厚さが5~8 nmのW/CoFeB/Ptの三層膜が、1~30 THz領域を十分にカバーする超短パルスを発生することを見いだしている。今回の新しい放射源は、帯域幅、テラヘルツ場振幅、柔軟性、スケーラビリティ、費用の点で、ZnTe(110)結晶などのレーザー発振器によって駆動されるエミッターよりも優れている。

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