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がん:対立する免疫機構と遺伝子機構が滑膜肉腫での発がんプログラムを形作っている

Nature Medicine 27, 2 doi: 10.1038/s41591-020-01212-6

滑膜肉腫(SyS)はSS18とSSXの融合によって起こる悪性度の高い新生物で、T細胞浸潤が少ないことが特徴である。今回我々は、単一細胞RNA塩基配列解読(scRNA-seq)、空間プロファイリング、および遺伝学的擾乱と薬理学的擾乱を組み合わせた統合的な方法を用いて、SySでのがんと免疫の相互作用について調べた。12のヒトSyS腫瘍に由来する1万6872個の細胞のscRNA-seqから、2つの無関係なコホートで、in situで免疫が機能しないニッチを特徴とし、不良な臨床転帰を予測する悪性のサブ集団が見つかった。機能解析によって、この悪性細胞状態はSS18-SSX融合によって制御され、マクロファージとT細胞から分泌されるサイトカインによって抑制され、HDAC阻害剤とCDK4/CDK6阻害剤の併用によって相乗的に標的化できることが明らかとなった。この薬剤併用は、SySモデルで悪性細胞の免疫原性を増強し、それによってT細胞の応答性やT細胞による細胞殺傷が誘導された。我々の研究は、融合によって生じる悪性腫瘍での不均一性を調べるための基本的枠組みを提示し、免疫回避と発がん過程の間の相互作用を明らかにしている。この相互作用は、SySやおそらく他の悪性腫瘍でも共標的化できるだろう。

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