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心疾患:初期の肥大型心筋症でのバルサルタン:無作為化第2相試験

Nature Medicine 27, 10 doi: 10.1038/s41591-021-01505-4

肥大型心筋症(HCM)は、サルコメア遺伝子の病原性バリアントによって引き起こされることが多く、左心室(LV)肥大と心筋繊維化、心不全と不整脈のリスク上昇を特徴とする。疾患の進行を修飾する治療法は現在のところはない。本研究では、初期HCMでの疾患進行の抑制におけるアンギオテンシンII受容体遮断薬バルサルタンの安全性と有効性を、多施設二重盲検プラセボ対照第2相臨床試験を行って評価した。総計で178人となる初期サルコメアHCMの患者を1:1に無作為に分割し、2年間にわたりバルサルタン(成人では1日320 mg、小児では1日80~160 mg)、またはプラセボを投与した(NCT01912534)。LVの壁厚、重量および容積、左心房の容積、組織ドップラー法による拡張速度と収縮速度、高感受性のトロポニンTとN末端プロB型ナトリウム利尿タンパク質の血清レベルについて、ベースラインから2年目までの標準化された変化を単一の複合zスコアに統合し、これを主要評価項目とした。バルサルタン群(n = 88)では、プラセボ群(n = 90)と比較すると、複合zスコアの増加[群間差+0.231、95%信頼区間(+0.098、+0.364)、P = 0.001]が示すように、心臓の構造と機能が改善されていて、今回の主要評価項目が満たされた。また、治療の耐容性は良好だった。これらの結果は、初期サルコメアHCMで、使用しやすく安全な薬剤によって疾患の進行を弱めるための重要な機会を示している。

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