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薬物乱用:オピオイドなどの薬剤の過剰摂取による死亡リスクの年齢パターンと世代パターン

Nature Medicine 26, 5 doi: 10.1038/s41591-020-0855-y

米国で継続している薬物乱用の多発は複雑かつ動的な現象であり、政策の進展や評価の中で取り組まれるべき問題である。米国での薬物過剰摂取による死亡(大部分はオピオイドの乱用)は、ほぼ40年間にわたって指数関数的に増加してきたが、この増加の機構についてはほとんど分かっていない。我々は、1999~2017年に起こった薬物過剰摂取による66万1565例の死亡について解析を行い、各生年コホートでの薬物過剰摂取による年齢別死亡率曲線が、ガウス形の正規分布を表す左右対称曲線に従って上昇下降していることを明らかにした。連続する生年コホートの死亡率曲線の上昇部分は、先行する全ての生年コホートに比べると加速している。この加速は、以下の2つの過程のいずれかに起因する可能性がある。すなわち、ピーク年齢は安定しているが、ある生年コホートからその次の生年コホートへの死亡率曲線の振幅が大きくなっているか、もしくは死亡率曲線のピーク年齢が若い方にシフトしているかのどちらかが原因だろうと考えられる。薬物過剰摂取の多発は、生年が1945~1964年のコホート(ベビーブーム世代)内で出現し、振幅が大きくなり、1965~1980年のコホート(ジェネレーションX)内で若年層へシフトし、その後、1981~1990年のミレニアル世代で振幅が増加するパターンに戻った。年齢パターンや世代パターンのこのようなシフトは、社会経済的な要因や薬物の入手可能性によって推進されたと考えられ、その解明は、有効な薬物過剰摂取防止策を作り出す上で重要である。

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