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がん治療:CRISPR編集されたT細胞の難治性非小細胞肺がん患者での安全性と治療実現可能性

Nature Medicine 26, 5 doi: 10.1038/s41591-020-0840-5

CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)–Cas9による免疫チェックポイント遺伝子の編集は、T細胞療法の有効性を改善する可能性があるが、まず必要なのは安全性と実現可能性についての理解である。本論文では、進行性非小細胞肺がん患者での、CRISPR–Cas9によってPD-1が編集されたT細胞のFIH(first-in-human)第1相臨床試験(ClinicalTrials.gov NCT02793856)の結果を報告する。主要評価項目は、安全性と実現可能性であり、副次評価項目は有効性であった。探索目的には、編集されたT細胞の追跡が含まれていた。事前指定された評価項目は全て達成された。PD-1が編集されたT細胞は、Cas9と単一のガイドRNAプラスミドをエレクトロポレーションを用いて同時にトランスフェクションさせることによりex vivoで作られた。全部で22人の患者が登録され、17人に注入するのに十分な量の編集されたT細胞が用意され、12人が治療を受けることができた。治療に関連する有害事象は全て、グレード1/2であった。編集されたT細胞は注入後、末梢血中で検出できた。無増悪生存期間の中央値は7.7週(95%信頼区間;6.9~8.5週)であり、全生存期間中央値は42.6週(95%信頼区間;10.3~74.9週)だった。18の候補部位でのオフターゲット事象は次世代シークエンサーを用いて測定され、変異頻度中央値は0.05%(範囲は0~0.25%)だった。我々は、CRISPR–Cas9による遺伝子編集を受けたT細胞の臨床応用は、概して安全で実現可能なものであると結論した。今後の試験は、治療効果を改善するためにより優れた遺伝子編集法を使うべきであろう。

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